都 はるみ(みやこ はるみ、1948年(昭和23年)2月22日 - )は、日本の女性演歌歌手、音楽プロデューサー。「はるみ節」と呼ばれる力強い歌唱法をもち、昭和後期を代表する女性演歌歌手として多くのヒット曲を世に送り出した。

来歴

生い立ち

在日韓国人の父と日本人の母のもとに誕生。芸事好きの母の影響で、小学6年から音楽学院に通いはじめた。京都市立嘉楽中学校の卒業証書を手にした際に、自身の本名が李春美であると知る。洛陽女子高等学校在学中に「第14回コロムビア全国歌謡コンクール」にて優勝し上京する。

歌手デビュー

1964年に「困るのことヨ」でデビュー。同年「アンコ椿は恋の花」がミリオンセラーを記録し、第6回日本レコード大賞新人賞を獲得。力強いこぶし回しや深いビブラートが支持され人気歌手となった。

1973年、サンミュージックプロダクションに移籍。

1976年、「北の宿から」で第18回日本レコード大賞・FNS歌謡祭最優秀グランプリなど数々の音楽賞を受賞する。1980年、「大阪しぐれ」で第22回日本レコード大賞最優秀歌唱賞を受賞。日本レコード大賞において大賞・新人賞(現・最優秀新人賞)・最優秀歌唱賞の初の三冠達成者となった。

1979年、作曲家の朝月廣臣と結婚するも、1982年に離婚。当時の都は1年の3分の1が地方巡業で、夫婦生活にすれ違いが生じてしまった。

引退

1984年3月、人気絶頂のなか「普通のおばさんになりたい」と突然の歌手引退を宣言。年末の『第35回NHK紅白歌合戦』出場を最後に一時引退。それまでの20年間のレコード・テープの総売り上げは630億円に達し、1984年12月の1か月のみで4億5000万円を売り上げた。

1987年、音楽プロデューサーとして活動を再開。全国でオーディションを行い、大和さくらをデビューさせた。同オーディションの落選者のなかには、のちに紅白歌手となる石原詢子や門倉有希、大石まどかがいた。対する大和の歌手生活は短命に終わり、プロデュース第1弾は失敗と評される。1989年にはキム・ヨンジャのプロデュースを担当する。

歌手活動再開

同年の『第40回NHK紅白歌合戦』にゲスト出演したことを機に歌手復帰を決意する。翌1990年、歌手活動再開を発表。従来の演歌にとらわれない幅広い作品を歌うようになる。歌手復帰に際しては「あの子(大和)を捨ててはおけないし、片手間に歌うわけにもいかないし」と葛藤があったことを明かしている。「もう一度やり直」す思いで歌手活動を再開しており、レコード大賞などの賞歴について「あの賞は昔のこと」と初心にかえるコメントをした。

2006年、京都府文化賞功労賞を受賞。2008年、新東京国際空港反対派農家の庭で開かれた「三里塚の星空コンサート」に出演。「涙の連絡船」「アンコ椿は春の恋」「ふたりの大阪」「好きになった人」等20曲近くを歌唱した。

2008年、個人事務所(プロデュースハウス都)の社長で私生活のパートナーであった中村一好が死去。2009年、古巣のサンミュージックプロダクションに復帰した。

2005年、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。2010年、紫綬褒章を受章。

2度目の活動休止

2015年、東京国際フォーラムでの全国ツアー最終日に、翌年の単独公演休業を発表。同年12月16日放送のBS朝日『日本の名曲 人生、歌がある 3時間スペシャル 都はるみトリビュート』出演をもってテレビ出演も休止した。

2016年2月18日、TBSラジオ『大沢悠里のゆうゆうワイド』にゲスト出演。充電中の近況を「精神的にスッキリした感じ」と報告。続けて「この歌でもういいかなと思うこともある。いい詞に出会えばいいけど、なかなか巡り会わない」と活動復帰に否定的なコメントを残した。都のマスメディア登場はこれが最後となり、2025年現在も歌手業を含めた芸能活動は完全停止状態である。

2021年、元俳優の矢崎滋とともに東北地方でホテル暮らしをしていることが報じられた。

エピソード

父が在日韓国人という事実は、都の母が1969年の『週刊平凡』にて公表した。その後取材が殺到し、仕事に影響が出ると考えた母は、これ以降取材を受けていない。それから7年後、レコード大賞受賞時には「そのような出自の人間が大賞にふさわしいのか」というバッシングが一部で見られ、賞を辞退すべきか悩んだという。

当初は京都出身にちなみ「京はるみ」としてデビューする予定であったが、すでに同名の歌手がいたため「都はるみ」に変更された。

都のプロデュース歌手第1号オーディションは「自分の上を行く、大歌手を育てる」という高い目標をもって開催された。それだけに注目度も高く、地方予選だけで数百人が集まるほどであった。グランプリの大和さくらは「エンドル(演歌のアイドル)」と呼ばれ、テレビCMに出演するなど順調な滑り出しを見せたが、1994年のシングルを最後に引退。大和を「10年に一人出るか出ないかの逸材」と評するほど惚れ込んでいたために、都の落胆は大きかった。後年は「あの子どこ行ったんやろ?」とステージで話題にすることがあった。プロデュース業の経験については、若い女性の指導にあたったことで母の苦労がわかり、客観的な視点をもてるようになったと肯定的に語っている。

パートナーであった中村一好は、東京大学卒業後に日本コロムビアに入社。石川さゆり「天城越え」・ちあきなおみ「矢切の渡し」・新沼謙治「嫁に来ないか」などを手掛けた凄腕のディレクターとして知られた。妻子がありながら都をディレクションするうちに深い仲となり、そのまま同棲。退社後は都の個人事務所社長を務めた。2008年、中村が自宅にて自殺。葬儀は中村の妻が取り仕切り、都は参列できなかった。

有田芳生とは有田の著書『歌屋都はるみ』の取材を機に親しくなり、都の公式サイトでは有田を「都はるみの大親友」としている。有田は中村一好を「兄のような存在だった」と述べている。

サンミュージック社長であった相澤秀禎は「アンコ椿は恋の花」でレコード大賞に出演した都を見て、かつて味わったことのない「気」「オーラ」を感じ、マネジメントしたいと思ったという。毎晩電話などで都の母へアプローチし、およそ9年後に都は同社の所属となった。

タイヘイトリオのファンであった母に連れられて、幼少期から歌謡浪曲ショーに親しんだ。「アンコ椿は恋の花」の歌唱に際し、タイヘイ夢路のくどい節回しや小節回しを参考にするよう母から指導された。

10歳下の実妹は「野川明美」の芸名で歌手デビューしたが、ヒット曲に恵まれず引退している。

都の登場以前は「ちりめんビブラート」と呼ばれる、振れ幅の狭い細かなビブラートが演歌界の主流であった。一方、都は長2度以上、4Hz前後のややゆったりとした振れ幅の広いビブラートを駆使した。

ディスコグラフィ

シングル

  • すべて日本コロムビアからリリース。
  • 「アンコ椿は恋の花」「涙の連絡船」「好きになった人」「北の宿から」「大阪しぐれ」「浪花恋しぐれ」の6曲がミリオンセラー(公称セールス)を記録している。

デュエット・シングル

アルバム

スタジオ・アルバム

ベスト・アルバム

  • 都はるみスペシャルベスト (2005年)
  • 都はるみ 魅力のすべて (2007年)
  • 都はるみ名曲選 風雪夫婦花 (2007年)
  • 都はるみゴールデンベスト (2008年)
  • 都はるみ全曲集 (2008年)
  • 都はるみスーパーベスト (2009年)
  • 都はるみ 全曲集 小さな春 (2009年)
  • 都はるみ ヒット曲集2010 (2010年)
  • 都はるみ 全曲集 小さな春 (2010年)
  • 都はるみ デュエット集 〜ふたりの大阪〜 (2011年)
  • 都はるみ 全曲集 大阪ふたり雨 (2011年)
  • 都はるみ プレミアム・ベスト 2012 (2012年)
  • 都はるみ 全曲集 たんぽぽの花 (2012年)
  • ツイン・パック (2013年)
  • 都はるみ プレミアム・ベスト2013 (2013年)
  • 都はるみ 全曲集 ありがとう おかげさん (2013年)
  • 都はるみ プレミアム・ベスト2014 (2014年)
  • 都はるみ 全曲集 冬の海峡 (2014年)
  • 究極ベスト / 都はるみ (2015年)
  • 都はるみ ダブル・ベスト☆オリジナル&カバーズ (2015年)
  • 都はるみ 全曲集 2015 (2015年)
  • ツイン・パック (2016年)
  • 都はるみ 全曲集 2016 (2016年)
  • 都はるみスペシャルベスト (2017年)
  • 都はるみ 全曲集 2017 (2017年)
  • 極ベスト50 (2018年)
  • 都はるみ 全曲集 2019 (2018年)
  • 都はるみ 全曲集 2020 (2019年)
  • 都はるみ 全曲集 2021 (2020年)
  • 都はるみ 全曲集 2022 (2021年)
  • 都はるみ 全曲集 2023 (2022年)

カバー・アルバム

  • 恩愛の花 〜都はるみ 市川昭介を歌う〜 (2007年)
  • 名曲カバー傑作選 (2009年)
  • 都はるみ 吉岡治を唄う (2011年)
  • 都はるみ 浪花を唄う 〜大阪しぐれ〜 (2011年)
  • 恩師 市川昭介先生七回忌企画 都はるみ 市川昭介を唄う (2012年)
  • 美空ひばりを唄う (2013年) ※配信限定
  • 都はるみ 昭和を歌う 〜さざんかの宿・大阪しぐれ〜 (2014年)

CD-BOX

  • 歌と共に50年 ありがとうございます 都はるみ プレミアムBOX (2013年)

トリビュート・アルバム

  • 都はるみを好きになった人 〜tribute to HARUMI MIYAKO〜 (2020年)

委託製作盤

  1. ちょおうさじゃ(1973年5月/愛媛県新居浜市新民謡。PES-7423)
    作詞:石本美由起/作曲・編曲:和田香苗
  2. 親子三代 千葉おどり(1977年/千葉県千葉市新民謡。PES-7770)
    作詞:大木威/補詞:石本美由起/作曲:市川昭介/編曲:佐伯亮
  3. はわい音頭(1977年/鳥取県羽合町新民謡。PES-7841)
    作詞:石本美由起/作曲:市川昭介/編曲:鈴木成仏
  4. 品川音頭(1977年9月/東京都品川区新民謡。PES-7879)
    作詞:小磯清明/作曲・編曲:服部良一
  5. 法輪音頭(東京都中央区築地本願寺新民謡。PES-7948)
    市川昭介作
  6. よこすか音頭(神奈川県横須賀市新民謡。PES-7982)
    作詞:石本美由起/作曲:佐々紅華/作曲・編曲:佐伯亮
  7. 大横浜音頭(神奈川県横浜市新民謡。PES-8103)
    作詞曲:茂田井幸/作曲・編曲:佐伯亮
  8. 海千鳥(1981年11月/PES-8113)
    作詞:大島マサエ/作曲・編曲:市川昭介
  9. こしの音頭(福井県丹生郡越廼村新民謡。1982年4月20日/PRE-1181)
    作詞:田中正/補作詞:森菊蔵/作曲:市川昭介/編曲:山田良夫

タイアップ曲

出演

映画

  • 馬鹿っちょ出船(1965年)
  • アンコ椿は恋の花(1965年)
  • さよなら列車(1966年)
  • 涙の連絡船(1966年)
  • スチャラカ社員(1966年)
  • 喜劇 駅前満貫(1967年)
  • 落語野郎 大爆笑(1967年)
  • 若親分兇状旅 (1967年)
  • 北の宿から(1976年)
  • トラック野郎・望郷一番星(1976年 東映) - 特別出演・都はるみ役
  • 男はつらいよ 旅と女と寅次郎(1983年、松竹) - 京はるみ役
  • ビッグ・ショー! ハワイに唄えば(1999年、東宝) - 都はるみ役

テレビ

  • 銭形平次 第140話「春姿一番手柄」(1969年、フジテレビ)
  • 山盛り食堂(1975年、日本テレビ)
  • 明日の刑事 第32話「九十九里浜に散る女の涙」(1978年、TBS)
  • ぴあの(1994年、NHK総合)ナレーション
  • 男と女のミステリー「カラオケスナック「あんこ椿」の事件簿」(1990年、フジテレビ)
  • 女子刑務所東三号棟5(2003年、TBS) - 慰問の本人役
  • 栄光の歌声!都はるみレコード大賞三冠物語〜新人賞・最優秀歌唱賞・大賞〜(2021年11月21日、2024年12月15日再放送、BS-TBS)

NHK紅白歌合戦出場歴

デビュー2年目の1965年から1984年の引退まで20回連続で出場。1976年には「北の宿から」の大ヒットで紅組トリを担当。その後、1998年の辞退以降は1度も出場がない。ただし都は実質「落選」であったが、番組側の配慮で「辞退」のかたちになったとする説もある。

実現には至らなかったものの、幾度となく紅組司会の候補にも挙がった。

2011年、五木ひろしとのジョイントコンサートで、五木から「紅白卒業を撤回すべき」と言われ「紅白はいつも見ている」「私はもう卒業したので」と返すやりとりがあった。

  • 対戦相手の歌手名の( )内の数字はその歌手との対戦回数、備考のトリ等の次にある( )はトリ等を務めた回数を表す。
    • 前半トリとは2部制が採用された1989年以降の紅白において、前半戦(ニュース中断まで)で両軍の締めくくりを務めたことを指す。
  • 曲名の後の(○回目)は紅白で披露された回数を表す。
  • 出演順は「(出演順)/(出場者数)」で表す。

CM

  • 永谷園 梅干茶漬け
  • サトウ食品 ごはん(1988年)
  • 日産自動車・日産ビジネスカー(1990-1991年)(シングル「BIRTHDAY」起用)

パチンコ・パチスロ

  • CR都物語(2005年)
  • やったネ!はるみちゃんシリーズ(2007年)

脚注

出典

注釈

関連項目

  • 有田芳生
  • 中上健次
  • 井上宗孝とシャープ・ファイブ

外部リンク

  • 都はるみ Sun Music Group Official Web Site
  • 日本コロムビア | 都はるみ
  • 都はるみ - NHK人物録

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都はるみ Mizutani Studio

都はるみの出演時間

都はるみの出演時間

都はるみ